冬場のエアコン工事は、正直に言うと「落ち着いて作業ができる時期」だと思っている業者さんも多いはずです。夏ほど件数に追われることもなく、時間にも多少余裕がある。ところが実際には、この冬場の施工が原因で、夏に一気にトラブルが噴き出すケースが本当に多いのが現実です。現場を見ていると、クレームや再工事の多くは、忙しい夏よりも、気が緩みやすい冬の工事に原因があると感じることが少なくありません。
冬場のエアコン工事で特に多いのが、真空引きに関するトラブルです。外気温が低いと、真空ポンプの効きが悪く感じにくく、ゲージの数値だけを見て「引けている」と判断してしまいがちです。しかし実際には、配管内部に水分が残っていることも多く、これが夏の高温時に一気に問題を起こします。冷えが悪い、運転音が大きい、最悪の場合はコンプレッサーに負担がかかり故障につながることもあります。こうしたトラブルは施工直後には表に出ないため、原因が分かりにくく、結果として業者の評価を大きく下げてしまいます。冬場ほど、時間をかけた真空保持と確認が必要だという意識が、プロには求められます。
次に多いのが、試運転不足による見落としです。冬場は暖房運転での確認が中心になり、冷房運転は省略されることが少なくありません。ただ、冷房を使わない時期だからこそ、ドレンや結露に関するトラブルを見逃しやすくなります。ドレンホースの勾配がわずかに逆になっていたり、室内機が完全に水平でなかったりすると、夏場に水漏れとして一気に表面化します。お客様からすれば「夏になったら急に水が垂れてきた」という印象になり、工事をした業者への不信感につながります。冬場の段階で冷房試運転が難しい場合でも、後日の確認や事前説明をきちんと行うかどうかで、トラブルの有無は大きく変わってきます。
冬場特有の落とし穴として、ドレン処理の軽視もよく見かけます。暖房運転ではドレン水がほとんど出ないため、施工時に流れを十分に確認しないまま完了させてしまうケースがあります。しかし、これが夏場になると、排水不良や逆流となって現れます。繁忙期に水漏れ対応で再訪問することは、時間的にも精神的にも大きな負担になります。冬の工事だからこそ、ドレン勾配や取り回しを厳しくチェックする姿勢が、結果的に自分を助けることになります。
また、冬場は暖房運転による振動や音の確認が甘くなりやすい時期でもあります。室外機の設置が不安定だったり、架台の固定が不十分だったりすると、暖房運転時に振動や共振音が発生します。これも施工直後に気づかなければ、後日「音がうるさい」というクレームに変わります。特に集合住宅では、上下階や隣室への影響も出やすく、対応が遅れると大きな問題に発展することもあります。設置時に一手間かけて確認するかどうかが、後々の評価を左右します。
冬場から春先にかけて増える引っ越し案件でも、トラブルは少なくありません。既存配管の再利用や隠ぺい配管の判断を誤ると、ガス漏れや能力不足といった問題につながります。「とりあえず付けてしまう」という判断は、短期的には工事を終わらせられても、長期的には必ず自分に返ってきます。経験を積んだエアコン業者ほど、この時期に無理な施工をしない判断力を持っています。できないことを正直に伝える姿勢こそが、信頼を積み上げる近道だと感じます。
冬場のエアコン工事は、売上だけを見ると地味に見えるかもしれません。しかし、この時期の施工品質が、夏の仕事量や評価を大きく左右します。クレームが少なく、再工事が発生しない業者は、自然と仕事が集まりやすくなります。結果として、エアコン工事業者募集やエアコン協力業者募集といった場面でも、「一緒に仕事をしたい業者」として声がかかるようになります。
エアコン工事は、ただ機器を取り付けるだけの仕事ではありません。季節をまたいで使われるものだからこそ、半年後、一年後の状態を想像しながら施工できるかどうかが重要です。冬場の工事を軽く見ず、一件一件を丁寧に仕上げる。この積み重ねが、繁忙期でも安定して稼げるエアコン業者への道を作ってくれます。
冬は、次の夏に向けた準備期間です。この時期にどれだけ真剣に現場と向き合えるかで、業者としての価値は大きく変わります。長くエアコン工事の仕事を続けていきたいと考えているなら、冬場の施工こそが一番の勝負どころだと、現場を見ていて強く感じます。
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